汚部屋のなかの私

 

退職した。大学院に専念している。思い切ったね、と言われると、まぁねと思うけれど、まあもうどこでもやれる自信みたいなものはついたし、いっぱい考えて決めたから。

 

 

 

13連勤したあと円満に無事にあたたかい雰囲気のなか退職して、引っ越しやらなんやらでいろいろドタバタと3月は過ぎて、

 

 

いつのまにか4月も過ぎた。

 

 

4月はあっというま、と過ぎてみれば思うけれど、そのときはゆっくりゆっくり過ぎているような感覚だった。ああ、素晴らしい、この生活を大事にしようという気持ち。同時に、こんなに時間があって良いの?どう疲れば良いの?これだけの時間を全部自分で決めなきゃいけないなんて大変だな、予定のない日々の使い方を考えるのって難しいな。と思ったり。

料理も掃除も出来る、睡眠もとれる生活が始まった。ぶわわ〜っと目の前が明るくてストレスがなくて、自分で自分のことを決められる幸せを噛みしめる。かと思いきや、将来の不安、就活への不安が訪れる。ぐぅっと押し寄せる。不安定。急に生活が変わったから?不安定だったな、って思えるいまは5月だけれど、それでもいま安定してるとは思えない。だって、きたない話だけれど、下痢しててなかなか戻らない。なんでだろ。ゴールデンウィークでの食べ過ぎか、冷えか。生活の変化にやっと気付いて、体がびっくりしてるのか。

 

 

仕事も好き、だった。その気持ちに嘘はないけど、そういう風に言ってた自分は愛してあげたいけど、仕事をしている自分は好きだったか分からないなぁ。ただ、一生懸命だったと思う。なりふり構わず、責任と愛を持っていたと思う。でも、今日、朝にお風呂入って、支度に時間かけて、かわいい自分で家を出たとき、ああ大学生みたいって思ったけど、いや違う、こうやってちゃんと支度出来る生活に戻れたんだ、というよりも、むしろ洗濯だって掃除だって料理だってして、身だしなみもちゃんとして、自分の過去の仕事に誇りを持って、研究も就活もやってる、そんな私、大したもんだよ、って嬉しくなったんだ。こういう生活を続けていこう、と。

 

 

もちろん、キャパが広がったということでもあると思う。

仕事を通していろいろ学んだ。学んだことの1つ、やらないよりやっちゃうほうが精神的に楽、そして意外と出来ちゃうことも知ったからそれが生活にも生きている。家事にも研究にも。

 

 

大学時代、あんなに予定ぱんぱんで楽しくて、奇跡みたいに楽しかったけど、帰ると汚部屋のなかだった。就活で悩んでぶれぶれで、恋を追いかけたり授業さぼったり、そのくせなぜか時間がいつも足りなくて、その結果の汚部屋。仕事を経験した私から見ると、何をそんなに不器用にやってるの、就活ちゃんとやりなよって思う。家事も。でもそのときの私の優先順位や生活を尊重してあげたいとも思う。尊重なんて言葉似合わないか。遊んで悩んで予定におわれたり、スカイプやら電話やらで焦りや寂しさを誤魔化して、いろんな輝いてる人と会って話して繋がって、フェイスブックはキラキラ、ツイッターはピカピカ、でも、いるのは汚部屋だった。

 

 

そんな私、よく生きていたな。予定を自分だけで決められないからそういうことになっていたんだな。全部うまくやれる人、どうやって学んだの。でもね、でも、私はいつだって一生懸命で、大学は、仲間は、すっごい楽しくておもしろくて最高だったとも思うよ。そういえば、研究だって頑張った。いろんなのめり込み方があるけど、私も大学にのめりこんだんだな。サークル、ゼミ、飲み会とかのお遊び。

 

 

そんなこんなで、いろいろ体当たりで覚えていったもんで、いまの私は就活も家事も研究もよくやってる。

 

 

昨年度、仕事していたときは、意地で家事も研究も頑張っていたけれど、でも、疎かになることも多かった。料理なんて一回もしなかった。洗濯はどうにかペースをつくれていたから出来たけど、掃除が滞ってた。ものが少ないからなんとかやれた。でも、いまは、完璧くらい。ちょこちょこさぼりはするけど、汚部屋のなかになんてもちろんいない。

 

 

精神状態が安定していくように。この生活に慣れていけるように。続けられるように。この生活を守る。5月がどんどん過ぎていく。高校とか大学とか、過去を幻みたいに慈しむ気持ち。大学での日々をこんなに懐かしく思う日がくるなんて思っていなかった。さあ、はばたくぞ、といつだって、そういう気持ちだった。進級も卒業も、不安だってあるけどそんなの乗り越えられるくらい自信やわくわくや気持ちの支えなんかがあったから。

 

 

 

でも、いまは分かる。思う。数年たったらこの1年のこと、泣きたくなるくらい大切に思うだろう。しっかり味わってくれ。この愛おしい時間を大事にするんだ。

 

 

 

 

終わってほしくない時間がたくさんあるのは、幸せなことなんだろう。