ウアアアーーーーーとか、そんなかわいいもんじゃない

 

グアーアアア、オオオオオ、ウアアア、

カタカナでもひらがなでも表記できないよーな、雄叫びのよーな、泣き声をあげて泣いて泣いて泣いた。泣きじゃくったのではなく、泣きまくった、泣き声をあげた、泣いて泣いて泣いた。泣き叫んだのに、それでも私の思いは伝わらない。

 

 

 

助手席で、声をあげて、雄叫びをあげて、泣いて、嗚咽がもれて、唾液も鼻水も涙も、ぐっちゃぐちゃになってるのに許してもらえない。どうやったら許してもらえるのか分からなかった。

 

 

 

時間を守る、といっても、もう会わない、といっても、今までの発言を謝っても、もうヒートアップしてしまった母は止まらなくて、あとはもう死ぬしかなかった。

 

 

 

母に何も通じなくて、私がもう彼と会わないと言っても、時間を守ると言っても、もう許して、怒らないで、元に戻って、と言っても、どんなに懇願しても母に何も通じなくて、また地獄が始まってしまうと思った。

 

 

 

許してください、もう会わないから、ごめんなさい、と泣き叫んだのに伝わらない、声が届かない。

 

 

もう怒らないで。

 

 

助手席で泣き叫んでるのに、母としてはもう私が何を言っても私が悪いことは変わらないようで、もう許してもらえなくて、どうすれば良いのかわからなかった。

 

 

 

父が車の後ろに乗っていたけれど、なにも分からない障害者なもんだから、いても無駄、むしろマイナスで、混乱した車内で怒鳴ってますます地獄にしていた。

 

 

 

 

母がこうなったのは父のせいでもある。

父がいつも約束を破ってきたせいで、母は誰の言葉も信じられないという。

 

 

 

事故が起こらなかったのは不幸中の幸いだったのか、母も叫んでいて、もう泣き叫んでいて、もう、もう、地獄だった。母はこんな家もう嫌だ、出ていきたい、死にたい、と言った。私もまったく同じ気持ちだった。

 

 

死にたいのに死なないのは、誰かの死を経験したからとか誰かが生きたかった今日だからとか、生きたいのに生きられない人がいるからだとか、そういうことじゃない。そんなことまで考えられない。ただ、死に方が分からないから死なないだけだ。

 

 

脳裏に、自分で何度も何度も腕や足をナイフで刺す映像が浮かぶ。窓から飛び降りる自分も想像出来る。でも実際にはやらないでいられる。自分で頭や腕、足を殴ったりつねったりするだけで済んでいる。それだけでも十分おかしいけれど。

 

 

 

どんなに泣き叫んでも、それでも分かってもらえないものだから、もう本当に、死んでしまうかと思った。腕を殴って、髪の毛を引っ張って、足に爪をたてたけど、やめなさいと叫ばれて、また怒られる。

 

 

 

 

不幸過ぎる。

 

 

 

また明日から仕事だなんて考えられない。

 

 

 

 

不幸過ぎる。

 

 

 

 

彼とももう会いません。もうこんなの嫌だ。

約束を破るな、と怒鳴られたけれど、もう自分で決めさせてくれ、と土下座した。

 

 

 

こんなになってまで、こんなにめちゃくちゃになってまで会いたいなんて思えない。母を元通りにしたい。

 

 

 

 

 

 

会いたかったなんて知られたらまたあの地獄が始まる。そんなこと考えられない、考えたくもない。

 

 

 

私を連れ出してくれたら良いのに、と思ったこともある。

 

 

何にも考えず、楽しい場所に連れて行ってくれる彼が好きだった。

 

 

 

でも、一生、なんて、そんな覚悟が彼にあるわけでもなし。

 

 

まったく、私は彼が好きだったのだ。でも、ずっとこんな調子じゃ、いつのまにか彼は他の女の子のところに行って、私も他の誰かを好きになるだろう。

 

 

ごめんね。

 

 

 

 

さようなら。