おじーちゃん

 

じいじ

 

急に、呼吸もちょっと苦しそうで目もあんまりあかなくなっちゃったように思えたものだから、なんにも言えずに涙が出てくるばっかりになってしまった。でも本当はゆっくりゆっくり、じいじは、ゆっくりゆっくり静かに、少しずつ、ちょっと前から、眠る準備をしていたんだと思う。なかなか会えないから気付かなかっただけで。

 

ぱぱが「分かる?」って声をかけたら、強く頷いていた。嬉しかった。私や弟を指して何か言いたいことがあるような様子も分かった。たぶん、きっと、頑張れって言っていた。頑張るよーと思って、そのままそう言った。頑張るよー、じいじみたいに頑張るよ。またね

 

声が出ないのがかわいそうだった。じいじは本も読むし、新聞だって手紙だって読むし、俳句も手紙もやる人だった。つい最近、ついさっきまでそんな感じだった気がしてしまう。少しずつ亡くなってしまいそうでこわかった。

 

お話だって楽しそうにしてくれたし、私たちの話を嬉しそうに聞いてくれたし、あ、そうだ、戦時中の話とか戦後の話とか聞いて、覚えておこうと思っていたのに、あんまり覚えてていられなくって、もう1回聞きたいなと思っていたのに、もう聞けないのか。

 

大好きだよ、って言いたかったけど、あまりにもお別れみたいで言えなかった。きっと、ぱぱにもそういうところがある。なんだか胸が詰まってしまって、こわくなって引いてしまう。現実を直視出来ない弱さ。

 

言葉の代わりに手を握ったら強く握ってしまったみたいで、顔をしかめていた。ごめんねじいじ

 

はらはら涙が落ちてマスクを濡らした、言葉よりも涙のほうがダラダラ落ちてきた、そういう私じゃ心細いかもしれないけれど、じいじ、なるべく、私も、ぱぱもままも弟も、近くにいるよ