「慰謝料払ってよ、」

今週のお題「ホワイトデー」

 

本当に別れたくなかった。だから、あんなこと言ってしまった。といっても言い訳にすらならないんだろうけど、でも数ヶ月後に電話で謝ったら、彼は許してくれた。許してくれているけれども罪悪感は消えないし、なんだか彼も私も痛々し感じ、良い思い出とは言えないものだけれど、もうそこまで感情は動かない、過去のことになっているので記録として書く。

 

 

 

 

 

 

私が台湾に行っている間は、まだ愛があった。(愛だなんてなんだか恥ずかしい表現だけれど、こう書いたほうが分かりやすいと思うので意を決して書かせていただく。)

 

私は大学最後の春休みの最初に台湾に行って、それからすぐにニュージーランドに留学した。

 

ニュージーランドは大変だった。

 

…私が疲れ果ててしまって、ニュージーランドからやたらめったらスタンプを送りつけたら、完全に彼の愛は冷めてしまったみたいだった。いや、もしかしたらニュージーランドに行く前から、スタンプを送りつける前から、ちょっとずつ冷めていたかもしれなかった。

 

だって春休みに入る前あたりから彼はあんまり会いたくなさそうな雰囲気、あんまり私にお金を出したくない雰囲気、あんまり私と電話したくない雰囲気をちょっとずつちょっとずつ濃くしていっていたから。

 

私の誕生日(2月)、彼は予定があいているのに、私と会う気が無いみたいだった。

 

そういう諸々のことに気付かないふりをして、ニュージーランドに飛び立った私。例えば、一緒に住んでた部屋に帰らなくなったり、夜まで飲むようになったり、そういうのに気付かないふりしてた。

 

 

 

ニュージーランドから帰国して、私は違う男の子たちとデートしていた。だって、その、当時付き合っていた彼氏からは連絡がなくて、私もスタンプを送りつけたあとは気まずいのもあって連絡していなくて。絶対私からは連絡しないほうが良いだろうな、と思って。でも…

 

全然、ほんと全然、連絡こないんだ。あーあ、と思って、ちゃんと話したい、ってメールしたら、すぐに電話がきた。明るく終わらせようと頑張ったんだけど段々イライラしてきて、それは止まらなくて、全部、全部、全部、出てきて、ふきだして、結局ぶちまけてしまった。

私は別れるのが苦手だ。

 

 

もしもし?久しぶり……別れよっか

 

……うん。ごめん、連絡しなくて。ごめん、連絡しようとしてたんだけどなんだか連絡できなかった

 

うーん、そりゃこわいよね、ごめんね、あんなにスタンプ送って。あなたはあなたで日本で楽しく過ごしてるのに、邪魔になっちゃうって分かってたんだけど 、すごく辛くて…助けてほしいって思っちゃって…よっかかってごめんね

 

いやいや、俺が支えなきゃいけなかったんだけど、でも、いま言ってくれたとおり、楽しくて忙しくて、目の前の生活に夢中になっちゃってて…

 

そっか。そういえば、もしかして、いまも、前みたいになにか別のことしながらテキトーに電話してる?電話してて大丈夫?

 

ううん、いまはなにもしてない、電話だけだよ。大丈夫だよ

 

……ねえ、もし私から連絡しなかったら自然消滅を狙ってたの?それはひどすぎるよ

 

ごめん、連絡しなきゃとは思っていたけど……

 

でも、してないよね。本当に、ひどいよ

 

ごめん……

 

そういえば合鍵はどうする?本は?郵送とか?

 

うん、そうだね。そしたら一緒に買った本はそっちに送るよ。悪いけど合鍵は送ってくれる?

 

本当に?本気で言ってる?嘘でしょう?そんなのありえない。最後くらい会ってちゃんと別れるでしょ、そんなテキトーなの、許さない。

 

ごめん、……じゃあ、俺がそっちに行くよ

 

本当?ありがとう、いつにしようか

うーーん、ねえ、じゃあそのときにバレンタインデーのお返しはちょうだいね

 

わかった、それは買っていくよ

 

やった……、ありがとう……、ねえ、バレンタインデーのお返しだけじゃ足りない。慰謝料払って。私、本当に本当に傷付いたんだよ。本当に、本当にひどいよ、私といて楽しくなかった?あの日のことも、あの飲み会も、私……私……ほんと、あれもこれもどれもそれも、傷付いた。慰謝料払ってよ

 

どういうこと?

 

なにが?図書券でも良いよ……

 

いや……どこまで本気で言っているのか冗談で言っているのか分からないよ。

 

本気だよ、本気で慰謝料がほしい。気持ちが収まらないんだもん、

 

そうか…………そうなんだ……

 

 

そして当日、彼は、私の最寄駅まできて、ホワイトデーのお返しのワッフルと一緒に買った本を渡してくれた。私は彼に鍵を渡した。

 

 

私は、わー、本当にホワイトデーのお返し!ありがとう、あー、いままでありがとね!って言った。笑顔で言わなきゃと思って笑顔で彼の顔をみた。病的だったなと思う。かわいくみせたいと思って、ニュージーランドでぼろぼろになった肌をマスクで隠して、そういうのも全部痛々しかった。別れてから気分をあげようと思ってカフェに入ってお昼ご飯にカレープレートを頼んだけれど、全然、びっくりするくらいなにも食べられなかった。食欲わかなかった。

 

それで確か、本をめくってたら、図書券発見して、それは3000円ぶんの図書券で、なんだか情けなくて悲しくて涙出てきそうだった。泣くのはみじめすぎるから、泣かなかった。

 

彼のツイッターみたところによると、「図書券を買ったらTポイントをつけるか聞かれてお願いしますと言ったらこの商品ではポイントつきませんと言われてだったら聞くなと思った」らしい。あああ、今度こそ本当に、情けなくて涙が出そうだった。

 

 

 

以上、私のホワイトデーの思い出。