お嫁さんに行きたくないから

今週のお題「ひな祭り」

 

小学校1年生だったか2年生だったか、それくらいとき、通っていたアトリエで、雛人形を作ることになった。

 

あき瓶に紙粘土をつけて着物のようにして、割り箸に紙粘土をつけて顔をつくり、その割り箸を紙粘土につける。作り手によって、頭でっかちだったり不恰好だったり、でもかわいいお雛様とお内裏様。

 

そんなお雛様とお内裏様を見ながら、アトリエの先生は私に、

「まだお雛様飾ってる?」

と聞いた。

「うん!」

私は私の家のお雛様が大好きだった、三人官女も。すっごくかわいくて、目鼻立ちが良くて、髪の毛もツヤツヤで、お気に入りだった。おばあちゃんが買ってくれたらしい、その立派なお人形さんたち。

 

「ひな人形は早めに片付けないとだめなのよ」

「どうして?」

「お嫁に行けなくなるからだよ」

「えーっ?」

その頃の私には、お嫁に行けないことが恥ずかしいことだなんて認識、無かった。そんな価値観知らないし、信じられなかった。

 

「じゃあ、うちはながめにかざっとこーっと」

「なぜ?お嫁に行きたくないってこと?」

「うん!」

「まあ、素敵」

私は家族と離れたくなかったから。ずっと一緒にいたいと思って、そう言ったのを覚えてる。

 

一時期、はやく結婚しなければと焦った。周りが良く見えて、焦燥感に耐えられなくて、ばかなことした。全然、だめだった。クリスマスケーキ論(25歳までに結婚しないとイキオクレ)なんて言葉、大っ嫌いと思いながら、そういう目を勝手に自分の中に作って、苦しんでいた。でも今は違う。

 

世間体とか世界とか他人の目とか常識とか、そういう分からないもの、自分を苦しめるものが少なくなってきた。それは成長であり、幼いころの私に戻ることでもあるように感じる。