いいなぁ、けいちゃんの親御さんは

 

うちの中学校って荒れてて、まあ荒れている子と荒れていない子で別れていたんだけども。

 

荒れている子は基本的に勉強しなくって、でも学校には毎日反抗するために(?)来ていて、ギャルだったりギャル男だったり、なんだか派手でよく先生に逆らったり反逆起こしたりしてて、個別で話したら良い子たちなんだけど、集団になると手がつけられなくなるよーな、そんな痛々しい子たちだった。今でこそそんな子たちの現在をSNSなんかで垣間見ると、それこそ痛々しくかっこ悪く感じてしまうことがあるのだけれど、当時の不良な彼らはすごくかっこよく見えていた。

 

かっこよくは見えていたんだけれど、それはその場限りのかっこよさってことも、こちら側としてはちゃんと分かっていた。勉強していれば…まあどーなるか分からないけれど、少なくとも、今反抗やらメイクやら男女交際やらやるよりも絶対将来輝ける材料を見つけて育てられる確率は高い。それくらいはなんとなーく分かる、そういうお年頃。

 

将来を削って、今、輝いているんだろうなと思っていた。命をガンガンに燃やして生きるように見えて、美しかったし嫉妬したし憧れた。盛りに盛られた前略プロフィールを真似たり、プロフィール写真を保存したり、プリクラ交換や手紙交換をしたり。かっこよかった。男の子も女の子も。

 

いじめや派閥や先生たちとの言い合い、先輩、後輩、友達との喧嘩、異性関係のもつれ、、そういうのについてはこっち側の私たちだって忙しかったけれど、目立たず静かに、ときには頭を使って計算しながら燃える私たちと違って、けいちゃんたち、ギャルたち、不良たちは派手に頭使わずやらかしていた。豪快に。嫌いだからという理由で人を殺しそうになったり、楽しいからという理由でいじめたり、あれあれていた。抜け出しなんてしょっちゅう、当たり前。私の友人の1人は先生に向かって怒鳴り散らすけいちゃんを見て、「私の子があんな風に育っちゃったらどーしよ…」と言っていた。失礼なよーだけど、私たちはあっち側じゃない。学校の半分の人たちは同じよーなこと思ってたんじゃないかな。

 

 

不良の子たちって、1人ひとりとは話してて楽しくて、いわゆる普通の子たちなんだけど、グループになるとダメになる。ダメになるというのは、自分のことを大切にしないという意味で。そういう意味で、集まるとどんどん悪くなった。そんなスパイラル。けいちゃんもそんな感じだった。肌も焼いて黒くなって、かわいかったのに、どんどん行き過ぎて中学生に見えないくらい老けた。大人っぽくてかわいかったのに、なんだかおばさんぽくなっていった。高校は辞めちゃったみたいだ。

 

 

けいちゃんは今もそのまんまだ。

前よりも太って、だけど今も髪の毛を伸ばして、しっかりメイクして、バイトをしてる。

 

 

そんなけいちゃんを風の噂、SNSで知って、あの子たちのかわいさの絶頂は大半の人たちの予想通り、やっぱり中学生だったんじゃないかなと思う。自分自身でも最強だと思ってたであろう、田舎の、あれた公立中学の、最高のギャル、不良たち。あーあ、やっぱりねと思う。あのとき想像したよーな人生、期待通りの人間になっていることがおもしろかったり切なかったりする。

 

 

カリスマ的存在だった、けいちゃんたち。フィールドは田舎だったけど、ただの公立中学校だったけど、わたしには決して真似出来なかった。キラキラしてた。なんで私がそーならなかったかって、、将来が大事?親の期待を裏切らない?規則を破ることへの恐怖?似合わない?…どれも違うようなどれも理由になるような。

 

 

でも、あこがれの人たちの真似はできなかったけれど、私も私でドラマの中に生きた。特に3年生は最高だった…。そう、私にとってもあの子たちにとっても学校は居場所であり楽しい場所であるはずのに、どうしてあの子たちはあんなに先生と対峙しながら必死に自分たちの道を築き上げようとしていたんだろう。私は学校が楽しかった。彼らにとってはどーだったんだろ。私にとっては青春だったよ。あそこまでスパイスを入れなくても素晴らしいものになるはずなのに……と少し上から目線で思う。

 

 

 

そんなけいちゃんだけど、中学のころから家事をちゃんとやってたらしい(けいちゃん母談)、でも私は家で全然お手伝いを出来ていなかった。

私はお母さんから「いいなぁ、けいちゃんの親御さん。みんな家事はけいちゃんがやるんだって、羨ましいよ。かわいいし。」と言われたとき、すごく悔しくて、けいちゃんのこと凄く嫌いになった。(まあ今思うと、あれくるってたけいちゃんをフォローするために、けいちゃんのお母さんが嘘ついてた可能性もあるけど……それは邪推かしら。)

 

 

 

けいちゃん?!けいちゃんよりも私のほうが頑張ってるのに。けいちゃんなんて、けいちゃんなんて、けいちゃんなんて……なにも考えられないバカなのに。まま、けいちゃんなんて……全然だめな子なんだよ……

 

 

 

その子たちの前では、私はニコニコしてたけど、プリクラもらって喜んでたけど、デコったノート見てすごい〜見せて〜って言ってたけど、メールかわいいって真似してたけど、それも全部本音だけど、かわいさが羨ましくて、なぜか堂々としてるのが妬ましくて、もうよく分からなくて、実は存在が嫌で、消えてほしくて、そう、カリスマだけどいないでほしくて。ほんとのほんとはそういうこと思ってた。ごめんね。でもきっと、全部もろもろ含めて、おあいこだよね。

 

 

 

そんなんだから、けいちゃんが人生の階段をゆっくり降りていくのを見届けていて、寂しさというよりもなんとなく優越感があった。意地悪だね。ごめんねけいちゃん。

 

 

 

でも、ここまで赤裸々にまとめて、さて、もう終わりだなと思う。だって、この感情はもう整理されていて、ずっと前に終わっていたものを今回ふと思い出して書いているだけだから。意地悪な私からも、ギャルや不良に囚われていた私からも、卒業できている。あんなふうに極端だった私。極端さからも、これからも徐々に、ゆっくりゆっくり離れていこう。