夏ごろの夢

 

お笑い芸人さんのひとりにはまって、ライブを観に行ったらたまらなくなって私もM-1に出たいやらキラキラしたあの光を浴びたいやら、あっち側に行きたいやら思ってしまうようになった。 

 

芸人をやってみる夢は、新宿の地下劇場を観に行って挫けた。全然おもしろくない人たちがなんかやってて、私はここからスタートするのか、それはちょっと嫌だなと思った。だったらもうちょっと設備が整っている、M-1の予選とかそういうのに出るだけで良いや。趣味で。と思った。でも、やるなら絶対相方にしたい相手にいくら懇願してもやってくれないと言ったので、諦めきれないけれど、諦めることにした。

 

 

そしたら、他に何か無いかな。芸人さんに認知されるような何か。あの人と挨拶を交わせるような、あっち側になれる何か。

 

 

そこで、そういう関連の求人をちょくちょく見るようになって、下心だけでどうにか「あっち側」に滑り込むことができた。

 

芸人さんのために、マイクのテストやらマイク渡しやら映像や広告作りやらする仕事だ。芸人さんは私を認知するとまでは言わないけれど、そばにいる。話すこともある。芸人さんが挨拶してくれる、話ができる、近くにいる。そういう楽しいだけの仕事だった。私じゃなくても良い仕事、いつでもやめられるような気楽な仕事。ピンマイクやハンドマイク、サンパチ、いろいろな用語を覚えた。イラレ、トライキャスト、使えるようになった。芸人さんの個人名をたくさん覚えた。

 

もうやめちゃったけど。

 

で、とうとう念願のあの人には会えなかった。あの人と仕事してる芸人さんとはたくさん会えたけど、あの人にはすれ違いもしなかった、惜しくも。いつもいつも、惜しいところで会えなかった。

 

 

以上、下心だけで続けたバイトの話。