ちっちゃい頃

 

赤ちゃんのあたしをだいて、ままはあたしの頭のとこの、とくとく脈うってる薄〜い皮膚を見て、ここをだれか意地悪な人にぶすっと指をさされたらどうしよう、とぞぉっとしたらしい。すぐに死んじゃいそうなあたしがこわくて、この子をまもらなきゃと思ったって。

 

 

ちっちゃい頃、ままのお腹にいた頃の記憶ある?と聞かれたとき、脳内にうかんだ映像を答えたけれど想像力豊かなあたしの妄想だったような気がする。もう答えは分からない。

 

 

ちっちゃい子どもからちょっと成長した子ども、になってから、死んだあとの世界ってあるのかなぁとかあたしは生まれる前なんだったんだろとか、そういうことをままと話してたら、

「でも、あなたは教えてくれたけどね。ままが聞いたらままを選んで生まれてきたって言ってたよ」と言われた。ままが思い浮かべているシーンとあたしが思い出せるシーンが同じかどうか分からないけど、あたしが覚えているのは、ままに聞かれたとき、空のうえから指差して選んでいるところが思い浮かんで(あるいは、思い浮かべて)それを答えたってこと。もしかしたら、あたしの記憶が残ってないだけで、ままはもっとあたしが小さい頃に聞いたのかもしれない。それで、妄想でない、あたしの本物の記憶を聞いてくれたのかもしれない。

 

 

どっちでも良いけど、それが妄想だとしても、そのときのあたしはままが大好きだってことを伝えたかったんだな、っていまになってやっと分かった。あたしってば、まったくかわいいんだから。